人工知能が特許を出願した日!

人工知能が特許を出願した日!(10回)

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勝ち残るために、そして辞めていく人たちへのリスペクト

グレゴリー・クラーク先生が書いた『10万年の世界経済史』(注1)で、面白いことを語っている。

1901年のイギリスで産業革命が起きた初期のころ、労役に使われた馬は325万頭いた。その後、長距離輸送は鉄道に代わり、機械の駆動は蒸気機関に取って代わられたが、馬はまだ畑を耕し、近場の輸送では荷車を引き、運河で船を引っぱり、炭鉱で働いていた。戦場では軍人が馬にまたがり指揮していた。しかし、1924年の馬の数は200万頭を下回り、20世紀後半に内燃機関が発明されると馬の頭数は急速に減少し、新たな馬の使い道はなくなり、わずかに競馬用の馬が残るだけになった。

わずか、20年ほどで3分の1の100万頭以上の馬がいなくなった。その後も馬の数が激減した。これは馬の話だったが、人は馬がたどった道とは違うと、果たして胸を張ってそう言い続けられるのだろうか……。

トーマス・ダベンポート氏は人工知能が発達したときの様子を次のように記述している。(注2)

――例えば、弁護士、医師、教師など高度な知識と経験が必要とされる難しい仕事でも、もはや人工知能のほうが優秀になりつつある。また、現時点ではまだ人間のほうが有能だとしても、コンピュータの処理能力は指数関数的に成長する。5年後、10年後は、追い越されていてもおかしくない――

逆に、「生き残る仕事はどれか?」という質問に、ダベンポート氏は「人間を相手にする仕事」を挙げている。

――たとえば医師の中でも、診察のときに患者と会話をしながら症状を聞き出すコミュニケーション能力は、当面、人間の医師のほうが高そうだ。さらに、深刻な病気を告げられるときに、人は機械から診断結果を告げられるよりも、生身の人間から気遣いとともに知らされるほうがうれしいだろう――

と、いうことは、単に医者だからといっても安心はできない。人工知能に容易に代わる医者もいるということだ。

ドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長は、
――人工知能が発展した未来に、人間に残された職業として、『奉仕・社会貢献』、『自立・独立』、『純粋な挑戦』、『全般管理コンピタンス』、『専門・職能コンピタンス』だ――
と、5つを挙げているが、具体的にどういう職業のどういうレベルの人たちを指すのか、この5つの職種に就いていれば全員が安心していられるのか。それとも選ばれた優秀な人たちだけなのか、それは明確にされていない。

シェフとウエイトレス

消えてなくなる職業でも何人かの人たちは残ると言ったが、それはどういう人たちなのだろうか。近い例として、レストランのケースを見てみよう。

ウエイトレスや配膳係のヒトがいなくなると言われているが、読者の皆さまはロボットが出てきてメニューを訊かれるのと、ヒトとではどちらがいいだろうか。
「そんなこと、訊くまでもない。ヒトに決まっている」、と多くの方が答えることだろう。

しかし、現状はそうとも言えなくなっている。例えば、回転寿し屋に入るとタッチパネルで注文し、しばらくすると握りや軍艦巻きなどが目の前に出されてくる。夜になって居酒屋に入る。そうするとタッチパネルでビールやつまみを注文し、そのあとでお兄さんかお姉さんがジョッキを抱えて持ってきてくれる。

お店によってはすでに半分がコンピュータ化、ロボット化が進んでいる。その内に支払いもその場でタッチパネルに向かってスマホをかざすと、ビットコインでOKということになるだろう。

近い将来、ジョッキ運びもロボットなんていうことになる。そのかわり値段は今よりぐんと安くなる。小遣いが減らされているサラリーマンにとっては歓迎したいところだ。

しかし、老舗のすし屋やこだわりのある洒落た店では、旬のものを親父さんやシェフが自ら腕を振るいすべての調理を一からすべてをこなすので、値段はどうしても高くなる。どちらを選ぶかはあなたの懐次第ということだ。

居酒屋でもロボット化を進めた値段の安い店と、カウンター越しに接客を重要視した比較的高額なお店とでは、その生き残り方が大きく違ってくる。

やっぱり安くて、美味しくて、接客のいいお店が流行るのはいつの時代でも変わることはないだろう。

医師

先にも記したが、心臓外科とか、脳外科などの世界最高技術で執刀する手術は、『ダヴィンチ』のような最新の人工知能ソフトを搭載した手術ロボットになっていくだろう。

何故なら、ロボットは決して間違わないし、手が震えて大切な神経や細い血管を傷つけるようなこともない。研修中の頼りない新米先生の実験台になることもない。いくら名医として名を馳せたブラックジャックといえども年は取るし、目もかすむ。体調や調子の悪いときもある。

ぎくしゃくしていたロボットも名医ブラックジャックよりスムースに動き、短時間で手術を終えるようになる。患者さんにとっても体力が温存され、結果的に喜ばれることになる。手術ロボットの性能は人の能力を超え、ますます向上していく。

あなたが、「あたしは人間の先生の方がいいんだけど……。ロボットがあたしの体を触ると思うとなんだかねー」、と話すと、友人は「あなた、勇気あるわねー。人間にしてもらうなんて」って、驚かれるようになるだろう。

それに対して、心のケアをする心療科などは人間の先生が診察することになるだろう。しかし、初診のヒアリングは人工知能の先生が行い、症状の判別から処置方法まで各種の情報が前もって人間の先生に提供されている。

名医と言われる医者とはどういう人たちを言うのだろうか、小説や映画の中で探してみよう。

山本周五郎さんの小説『赤ひげ診療譚』に登場する強面の赤ひげ先生、新出去定(にいできょじょう)はどうだろうか。1965年、黒澤明監督が映画化し、三船敏郎さんが赤ひげを演じ、大ヒットした映画だが、赤ひげ先生は無口で寡黙だった。

『ジェネラル・ルージュの凱旋』(海堂尊原作、中村義洋監督)の速水晃一医師と、『ディア・ドクター』(西川美和原作・監督)の伊野治先生の場合はどうだろうか。

映画の中の速水医師は堺雅人さんが都会の大病院の鋭利な救命救急医師を、伊野先生は笑福亭鶴瓶さんが人情味溢れる田舎の名医と尊敬される偽医者を演じ、両作品とも素晴らしい出来ばえで好評を博した。堺雅人さんは第33回日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を、笑福亭鶴瓶さんは同じ第33回日本アカデミー賞優秀主演男優賞をそれぞれ受賞した。

人工知能が今よりもはるかに発達した2030年に、この2人の医師のうち、どちらの医師が患者を診ているだろうか。

速水医師か、伊野先生か。答えは、2人ともいなくなる可能性が大きい。

何故ならば、救急病院には、それに対応する人工知能ロボット、ドクター・ワトソンやダヴィンチが配備されているからだ。ドクター人工知能は24時間、疲れることも間違えることもなく、瞬時にして、しかも完璧に対応しているだろう。

もう一人の鶴瓶ちゃんが演じた医者は偽医者だったが、人に優しく、人情味があり、理想的な町医者のように見える。彼がしていたことは、ほとんどが問診というより爺ちゃんや婆ちゃんの話し相手で、いつもの薬を処方しているだけだった。医者としての能力はなかった。

しかし、患者に寄り添い、話を聞くことは一番大事なことで、『ディア・ドクター』で西川美和監督が表現したかったのも人と人との心の触れ合い、心が通い合う素晴らしさだったのだろう。人工知能ロボットがいろんな職業を奪っていくだろうが、人間ができる最後の砦は鶴瓶ちゃんのような『人間味』のある医師(ヒト)なのだろう。

教育と教師

人間味のある人を育てるためには、教育がとても重要になる。

いま、世界中で戦争や宗教問題、それに経済格差やその他のいろんな理由から教育を受けられない子供がたくさんいる。裕福な国と思われる日本でも高等教育を受けられるかどうかで、就職の可否や生涯収入に大きな違いが生じている。その格差はますます開き、一生をかけても追いつけないほど広がっているそうだ。

子供たちへの教育は誰でも平等に受けられるようにするべきで、将来のある子供が教育を受けられない、そんなことがあってはならない。有能な子供たちを埋もれさせることは、日本の国にとっても大きなマイナスになる。日本は資源が乏しいのだから、せめて優秀な子供たちが活躍できるようにしてあげるべきだ。(注3)

アメリカでは日本以上に収入の格差が広がり、経済的な理由で高等教育を受けることができない子供たちが増えている。それで、Web上で有名大学の世界的に著名な教授の授業が、無料か格安の料金で受講できるようになっている。

これらの学校はMOOCs(ムークス)と呼ばれ、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校の低額コースや、MIT(マサチューセッツ工科大学)、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)、エール大学、カーネギーメロン大学の無料コースなどがあり、世界中の人が受講しているそうだ。

例えば、スタンフォード大学で実施している人工知能のオンライン・コースは世界中で5万8000人が受講したそうだ。学生1人当たりのコストは下がり、今まで貧乏で受講できなかった人たちまで質の高い教育を受講することができたそうだ。

このようにインターネットを通じて個人の理解度に応じた個別指導ができるようになると、基本的な学習は家庭で行い、宿題や体育、音楽、それに美術などの芸術関係は学校に集まって集団教育を受けるような逆転現象が起きる可能性がある。

それに、学校に行かないので、『不登校』という不名誉な言葉自体がなくなり、『不登校の生徒』、『不登校の問題』が雲散霧消する。子供たちはもちろんのこと、親にとっても自分の子供がいつか不登校にならないかという心配の種が一つなくなることになる。

そうなると、これまでの先生の役割も大きく変わることになる。

小学校と中学校の先生は生徒に直接授業を教えることはなくなる。学校に来て宿題をしている生徒の質問を聞いたり、一人ひとりその子に合った個別の指導をしたりする。あとは、作文や音楽、美術の指導だ。これらの教科は自分自身をよりよく表現する力を養い、情操教育に役立つ。体育は子供たちの体力の向上を目指し、なにより簡単にはへこたれない精神力を養うことができる。

さらにクラブ活動はもっと大切になる。同じ目的を持った仲間たちとの共同作業の方法などを身に付ける訓練ができ、かけがえのない友を得ることができれば最高だ。だから、これらの教科は『人間性』を形成するために、これまで以上に重要な教育科目になるだろう。

要するに、人としての集団生活の訓練や情操教育がより大切になってくる。

学校は人と人との交流の仕方や係わり方、社会生活する上でのノウハウや創造性の発揮、リーダーシップの取り方や起業化に必要なことなどを教える。これらは一人ひとりが個性豊かに独立して生活していける人材の養成につながる。

新たな科学技術を創造できる人材を育成するには、これまでのSTEM(科学、技術、工学、数学)に加えて、作文や美術、音楽などの「アート」を加えたSTEAMが必要だと、ロードアイランド・デザイン学校校長のジョン・マエダ先生は主張している。(注4)

これらの教科は、これまで国算社理英の主要5教科に対して副教科と呼ばれていたものだ。今後はこれらの副教科がより一層重要になってくるということだ。

高校や大学はどうなるのだろうか。

大学生は基礎教育課程の間は、大学に通う必要はなくなる。大学では教授やゼミの仲間とディスカッションするためにセミナールームに集合し、集中的に専門教育を受けることになる。VRやMOOCsを利用すれば、世界中から選りすぐりの学生たちが一堂に会することができる。

教育のグローバル化が進み、大学は安い授業料で世界中にいる学生に講義する。その中から優秀な学生だけを呼び集め、最先端の研究を自由な発想で研究してもらう。学生はこういった環境の中で存分にその能力を高め、超一流の逸材となり世に出ていき、最高の仕事を成し遂げていく。大学は優秀な学生を多く輩出したことでその名声も名誉も上がる。

大学の教授は講義をするという煩わしさから解放され、本当に優秀な学生とともに自分たちの研究に専念できる。教授たちにとっても本来の姿に戻れるわけだ。要するに、単に授業をしているだけの教授はお払い箱になるだろう。

真の大学教授としての価値が問われることになり、大学の先生だからと言って安穏とはしていられない。

これまでに述べてきたように、第四次産業革命を乗り切るためには、創造性豊かな優秀な人材を育てること以外にはないように思う。これは日本人だけの問題ではない世界共通の困難で悩ましい課題なのだ。今、何らかの手を打たなければ手遅れになることは明らかだ。

[コラム 10]

広井良典先生(京都大学こころの未来研究センター教授、千葉大学法経学部客員教授)は1980年以降、日本の経済格差は広がっていると指摘している。(注5)

広井教授は、その理由の一つに生産過剰を挙げている。「生産性が上がれば上がるほど失業が増える」、という逆説的な時代が生まれているとして、次のように述べている。

――すなわち技術革新と大幅な労働生産性の上昇により、われわれは以前より汗水たらして働かなくてもよくなり、「楽園」の状態に少しずつ近づきつつある。ところが困ったことに、「すべてのものが働かずに手に入れられる」楽園においては、成果のための給与が誰にも支払われないということになり、結果として、そうした楽園は、社会的な地獄状態を――現金収入ゼロ、100%の慢性的失業率――
になってしまうと述べている。

シャープを買収した台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のテリー・ゴウ(郭 台銘)CEOは、「将来、ロボット労働者を100万台導入する」と2013年の年次総会で述べた。鴻海の従業員数は100万人だから、数字上はすべての従業員をロボットに替えることになる。

さらに、ゴウCEOは、こうも言っている。

「人間もまた動物なので、100万の動物を管理するのは頭痛の種だ」、と。

確かに口を持たない人工知能労働者(ロボット)ならば、不平ひとつ言わずに24時間、働き続けるだろう。いやロボットの場合、人格がないので人偏のない「動き続ける」、ということなのだろう。

「従業員100万人のすべてをロボットに代えたい」、という究極の姿が達成されたときの1人当たりの生産性は無限に大きくなるが、誰1人鴻海の製品を買うことができない。そのために、ゴウCEOですら収入を得ることができなくなり、資本家も労働者も血の池地獄の窯底で喘ぐことになる。

これはあまりにも極端な話ではあるが、このような状況が先進国で、日本で確実にしかも着実に進行している。そして行き着いた先を広井教授は、「社会的な地獄状態」、「過剰による貧困」と呼んでいる。

それを証拠付けるように、生活保護受給者は1997年の6.7%から2012年には18.4%に増大している。(注6)

「過剰による貧困」は、雇用を巡る競争を激化させ、採用されたものの過重労働により、ストレスや健康悪化に悩まされ、うつ病を患い、挙句の果てには自死を選ばざるを得ないような断崖絶壁をさ迷う状況に追い込まれている。

このように「失業」と「過労」が共存し、しかも、経済格差、教育格差、男女間格差の三大格差が増大するというパラドックスに陥っているのが日本を含め、世界の先進国と言われる国々で蔓延しつつあるのだ。しかも現在のこの状況は、まったくの初期症状にすぎないということだ。

経済のパイが右肩上がりのとき、これまでの経済成長やGDPの増大、そして富の増大はみなの幸福につながった。しかし、世界の人びとの需要は成熟しつつあり、飽和に近づいている。

限りないパイの総量の増大はアフリカの奥地まで行き届き、世界中を見回しても今やどこにもなく、もはや経済成長が期待できない状況に近づきつつある。そうした中で拡大成長期と同じような行動や経済政策を続けるとすれば、資本家と労働者が、生産国と消費国とがお互いの首を絞めあうような時代がいっそう早まるだけである。

日本やヨーロッパ、そしてアメリカは成熟期に入っている。そのすぐ後を韓国や中国が追いかけている。これまでのようにGDPを増大させるような政策や手段だけでは人びとは幸せになれないのだ。人工知能がさらに発達し、工場同士、製品同士が、さらにヒトも含めてIoT(モノのインターネット)でつながると、なおさら生産性が向上する。すると、失業者がおのずと増え、社会不安がさらに大きくなる。

最後に広井教授は、「今日の日本の犯罪率はあまり高くなく、世界でももっとも安全な国の一つとして世界中の人びとから賞賛されているが、この栄誉はいつまでも護り続けたいものだ。そのためにも富の公平配分を促すシステムつくりが急を要することなのだ(赤マーカーは筆者が付記した)」、と訴えている。

[コラム 11]

アメリカの就業事情を見てみよう。

2013年のアメリカでは、成人の2190万人が失業もしくは不完全雇用、あるいは就業意欲のない人たちだそうだ。1997年から2005年にかけて米国国内の製造業の生産高は1.6倍に増大したが、2000年から2008年の間に、製造業の雇用が390万人分なくなった。その原因に、コンピュータなどのハイテク技術の使用により生産性が劇的に向上し、より少ない労働力でより多くの生産が可能になったことが原因であるといわれている。(注7)

世界全体では、2011年、成人労働者の25%が失業、もしくは不完全雇用、あるいは就業意欲のない人たちだ。4人に1人は働いていないか、働けない状況にある。国際労働機関は、2013年に就業していない人は2億200万人を越えたと報告している。(注4)

ミシガン大学経済学マーク・J・ペリー教授は、「製造業者は『少ない資源(労働力)で多くの成果を挙げる』術を学んだため、生産性と生産効率が大幅に向上した」ことだと結論付けている。(注8)

技術の進化と深化、そして高度化に伴って工場労働者が専業ロボットに置き代わって行くと、人件費の生産コストに占める割合は小さくなり、製品のコストはそれに伴い下がって行く。その影響は中位労働者以下の人たちほど大きい。資本家と労働者、富める人と貧しき人との格差は広がる一方になる。

MITスローン・スクール経済学者のエリック・ブリニョルフソン教授と同大学デジタルビジネスセンター・リサーチサイエンティストのアンドリュー・マカフィー主任は、「景気大後退」と「大失業時代」が訪れると警告している。(注4)その兆候がすでに見られており、中レベル以下の労働者の賃金は現状維持か、むしろ下がっていると言う。

新聞やテレビ報道を見ていると、上記の説が正しいように思われる。

イギリスのオックスフォード大学、人工知能研究者のマイケル・A・オズボーン博士の論文『雇用の未来』が話題になっている。702業種の職業を綿密に調査し、コンピュータ化によってこれからわずか10年後だけど、現在の職業の内、47%がなくなると予想した。(注9)

イギリスでの話だがほぼ半数だ。日本人は勤勉だし、仕事も一生懸命まじめにこなすので事情は異なると言えるだろうか。

野村総合研究所は2015年に、日本のこれから10年後、20年後にイギリスより多い49%の職業が、機械や人工知能によって代替可能だと発表した(注10)。

その理由として、日本の事務系社員の生産効率が低いことが挙げられている。

消えると指摘された職業は、医療事務員、駅務員、会計監査係員、学校事務員、給食調理人、行政事務員、銀行窓口係、金属研磨工、警備員、自動車組立工、自動車塗装工、スーパーの店員、測量士、タクシー運転者、宅配便配達員、電気通信技術者、電子部品製造工、道路パトロール隊員、ビル施設管理技術者、ホテル客室係、レジ係、路線バス運転手などの従業員などだ。これらの仕事には現在、2500万人の人たちが働いている。全員がいなくなるというのも考えにくいが、少なくとも半数の1200万人は職を失うことになるだろう。

それに、警察官もなくなる職業に含まれている。いきなり警察官がロボコップに代わることではなく、町中に張り巡らされた監視カメラやマイクなどと人工知能がつながり、犯罪者や犯罪の種を容易に発見できるようになるからだ。

行きつく先は、完全な監視社会になる。とても息苦しく、住みづらい社会のようにも思える。しかし、過去を振り返ると、街に監視カメラを設置し始めたころ、プライバシーがどうのこうのと言っていたが、それも一時のことで、今では皆が当たり前のように犯人が逃げ惑うところをテレビで見て、はらはらドキドキしている。犯罪者を逮捕するのに監視カメラは抜群の威力を発揮している。

一方で、小学校や保育園の先生たちはどうだろうか。

個性豊かな子供たち一人ひとりと肌で触れ合うことが大事で、子供たちは繊細でデリケートだから人工知能には難しい作業だと言われている。

他に残る職業は何があるのだろうか。

それは、アナウンサー、犬の訓練士、医療ソーシャルワーカー、インテリアコーディネーター、インテリアデザイナー、映画カメラマン、映画監督、エコノミスト、音楽教室講師、学芸員、学校カウンセラー、観光バスガイド、クラシック演奏家、グラフィックデザイナー、ケアマネージャー、経営コンサルタント、ゲームクリエーター、産婦人科医、外科医、歯科医師、広告ディレクター、コピーライター、作業療法士、作詞家・作曲家、社会福祉施設介護職員、スタイリスト、ネイル・アーティスト、俳優、鍼灸師、美容師、舞台演出家、放送記者、ミュージシャン、レストラン支配人などといわれている。

筆者の個人的な感想で恐縮だが、歯科医が今後も人間の医者であり続けることにほっとしている。いくら優秀な人工知能ロボットといえど、無機質、無感情のロボットアームが延びてきて、先に取り付けたドリルで口の中をガリガリかき回されるのは考えただけでもゾッとする。

全身麻酔をして執刀する口腔内手術なら、世界最高の人工知能を搭載した手術マシン、「デンタル・スーパー・ダヴィンチ(筆者が付けた仮名)」の出番かも知れないが。

参考文献
(注1)10万年の世界経済史 グレゴリー・クラーク著 日経BP社 2009年
(注2)AI時代の勝者と敗者 トーマス・ダベンポート著 日経BP社 2016年)
(注3)科学技術イノベーション総合戦略2016 科学技術政策 内閣府 2016年5月24日閣議決定
(注4)機械との競争 エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー著 日経BP社 2013年
(注5)広井良典著 ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 岩波新書 2015年
(注6)下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 藤田孝典著 朝日新聞出版 2015年
(注7)世界の失業者数、今年2億人突破へ=ILO予測 ロイター 2013年1月22日
(注8)限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭 ジェレミー・リフキン著、柴田裕之訳 NHK出版 2015年
(注9)オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」 702業種を徹底調査してわかった マイケル・A・オズボーン 週刊現代 2014年11月8日
(注10)労働人口の日本49%、米国47%、英国35%がAI・ロボットに取って代わられる?

(最終回に続く)

工学博士 黒川 正弘

黒川正弘先生のプロフィールや著作については、こちらをご覧ください。

-人工知能が特許を出願した日!

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